滿城春色宮牆柳

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回し蹴りを男の顔面

風呂からあがると脱衣場に体重計があった。一瞬頭に痺《しび》れるような感覚が走る。博はふらふらと見入られたように体
「おれだけど」
 小百合が黙る。ドアの向こうで立ち尽くしているのが気配でわかった。
「開けてくれよ」
 まだ小百合は黙っている。しばらくしてコトリと錠《じょう》が外された。
 ドアを開ける。ネグリジェ姿の小百合が立っていた。足元に目がいく。男物の靴があった。
 奥をのぞいたら四十代半ばくらいのぶさいくな顔の男がテーブルでビールを飲んでいた。
 男が博を見て、ポカンと口を半開きにしている。
「おい小百合、誰だ、あの男は」
「ちがうの。博さん、ちがうの」小百合が懸命にかぶりを振った。
「この淫売が。おれがいなくなって早速別の男をくわえ込んだのか」
「そうじゃないの。話を聞いて」
 頭に血がのぼった。靴を脱ぐと小百合を押しのけ部屋に上がった。
「あ、いや、何かな」男があわてている。「おれは関係ないんだけど」腰を浮かせ、あとずさりした。
「うるせえ、この間男が」博が男を怒鳴りつける。
「待って、博さん。お願いだから」
「やかましい」すがる小百合を振り払い、男に迫った。
「ちょっと、おにいさん、冷静になろうよ。おれはただ図書館でスポーツ新聞を読んでたら、そこのおねえさんが——」
「やかましいって言ってんだろう」
 男の胸倉をつかみ引き寄せた。
「ちょっと、小百合さん、これどういうこと?」
「うるせえっ」
 男の頬に拳《こぶし》を打ちつけた。男が床に倒れ込む。
「痛《いて》えな、おい、何をするんだ。やめろよ」
 激情が湧いてきた。今度は回し蹴りを男の顔面にヒットさせた。男はうめき声をあげ、その場にうずくまっている。
「おい、立て。このくそオヤジが」博が上から怒声を浴びせた。
「……にいちゃん、しゃれにならんぞこれは」
 男が立ちあがる。顔つきが変わっていた。テーブルにあったビール瓶をつかんだ。博も負けじとガラス製の灰皿を手にした。
「お願い、二人ともやめて」
 小百合が割って入ろうとするのを博は肘で払いのけた。
 男がビール瓶を振りあげ、飛びかかってきた。たちまちもつれ、二人で床を転がった。
「やめて、お願いだからやめて」小百合が泣き叫んでいる。「わたしのために喧嘩なんかしないで」
 別の怒りが込みあげた。何を言ってやがるんだ、このデブが。自惚《うぬぼ》れるな。誰がおまえみたいなサエない女を取り合って喧嘩するっていうんだ。
「みんなわたしが悪いの。だから争わないで」
 泣けてきた。自分に哀れをもよおした。こんな夜に、こんなサエない女の部屋で、こんな貧相な中年男を相手に戦っている自分に。


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