愛は秋が深まるに

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と薄い帳簿の間を

「恐れ入りますが、それでしたらあの証券の窓口へいらっしゃってください」
 男はそう教え、立ちあがってカウンターの内側をロビーの栄介と並んで歩き、証券、と書いた札のある窓口の男に、うしろから声をかけてくれた。
 証券の係りの男がすぐ栄介をみつめ、軽く頭をさげる。
 栄介は上着の内ポケットから白い封筒をとりだし、中の当たりくじを半分ほど引きだして、封筒ごとさしだした。
「暮れの奴に当たったんです」
「それはおめでとうございます」
 係りの男は栄介から当たりくじがのぞいた封筒を受けとると、それを自分の前へきちんと置き、カウンターの下から薄い帳簿のようなものを出すと、慎重な手つきでくじを封筒から引きだし、帳簿のページを繰った。
 栄介は、その男の目がくじと薄い帳簿の間を、往復するのをみつめていた。
「少々お待ちください」
 係りの男はそう言ってから、くじをひっくり返して、裏の記入欄をたしかめ、立ちあがると並んだデスクの間を縫って、奥のほうにある大きなデスクのほうへ去った。
 栄介は左手の指で、冷たいカウンターを無意識に叩《たた》きながら見ていた。
 大きなデスクの男が、机の上を探す様子で、すぐ何か書類のようなものをひろげた。
 二人はそれをのぞきこんでいる。
 栄介のくじは、大きなデスクの男の手に渡り、その男はやがて顔をあげて栄介のほうを見た。その表情には驚きの色があったようである。
 間違いなく、栄介が買った宝くじは一千万円の当たりくじであった。
 くじの裏に記入した住所・氏名と、それを持参した人物が同一人物であることを証明するため、住民票を提出すると、係りの男は銀行の便箋《びんせん》にペンで預り証を書いて栄介に渡し、まるで自分が当たったようにニコニコしながら、
「当せん券は今日のうちに本店へまわされまして、それから宝くじ部で鑑定をうけます。鑑定は有楽町《ゆうらくちよう》の別館で行なわれますから、地方の支店でお受けした場合は少し日数がかかります。でも、ここは都内ですから、三日ほどお待ちいただくだけでお支払いできます」
 と言った。


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